新不動産登記法
■不動産登記申請の何がどう変わったのか
今回の不動産登記法の改正により、司法書士業務としては本当に大きな変化なのですが、手続き的なことは一般の方にはあまり関係が無いので直接的に影響の大きな点だけあげておきます。
また今までブック庁とコンピュータ庁の2種類の登記所が存在していましたが、新たに法務大臣の指定によるオンライン指定庁が加わり当面全国に3種類の登記所が混在することになります。
(現在、京都でオンライン指定庁に指定されている法務局は、本局・伏見出張所・京田辺出張所の3登記所ですが、平成19年1月15日から新たに嵯峨出張所・宇治支局・園部支局がオンライン指定庁に加わります。オンライン指定庁についてはこちら)
改正法施行と同時に全登記所で適用された規定もあれば、オンライン指定庁になって初めて適用を受ける規定もあるのでなかなか理解しにくのですが、将来的に全登記所がオンライン指定庁に移行することを考慮して、そのオンライン指定庁に申請すると想定してその変更点をあげてみましょう。
- 新たな権利証が発行されなくなり、代わりに登記識別情報・登記完了証が発行される。(現在発行済の権利証は今後書面申請する場合には有効に利用できますので大切に保管してください)
- 保証書制度が廃止され、事前通知制度の強化・司法書士等資格者代理人による本人確認情報提供制度・公証人による認証制度・前住所通知制度が新設された。
- 出頭主義が廃止され、書面を郵送する方法も認められたり、インターネットを通じても登記申請ができる。
- 申請書副本申請が認められなくなり、登記原因証明情報の添付が義務付けられた。 この登記原因証明情報は利害関係があると閲覧できる。
- 前項の登記原因証明情報導入により、実質中間省略登記ができなくなった。(司法書士はやりません)
- 不動産番号制度が導入され、全ての不動産に13桁の数字を割り当て表示部に記載することで特定を容易にする。
今後の課題
- ほとんどの一般市民に改正点の重要性が理解されていない。
- 一生のうち1回有るか無いかわからない登記申請を果たして一般市民がするのか?しかもオンラインで。
- インターネットを利用するには現行法では申請者の電子署名・電子証明書が必要とされているが一般市民は持っていないし、住基ネットの利用を好まない人も多い。またそれ以外の添付情報も全て電磁的記録として添付送信できるものでなければならないと現時点ではハードルがやたら高い。
- 郵送申請が認められるといっても完了書類は取りにいかなければならないとは・・・
■登記識別情報
権利証(登記済証)と登記識別情報
今までは不動産を売却したり担保に入れる場合、印鑑証明書と権利証(登記済証)を提出して登記申請を行っていました。
これは、登記済証が登記をした後に権利者に交付される重要な書類であり、以後の登記申請においてそれを提出させることで本人の確認をする機能を有していたからです。
しかし、いったんオンライン指定庁になると、オンラインで申請しようが書面で申請しようが登記済証は発行されません。
そもそも便利なのでネットで申請したのに完了書類は紙なんて変ですものね。
そこでその登記済証に代わり以後本人を確認する機能を有するものが登記識別情報なのです。
この登記識別情報は、所有権移転や抵当権設定等の登記により新たに登記名義人になった個人や法人に
不動産ごと、登記事項ごと、登記名義人ごとに通知されます。
これは、「情報」とあるようにパスワードのようなもので、12桁の英数字(0〜9までのアラビア数字とA〜Zまでのアルファベットの計36種)のランダムな組み合わせになります。例えば「45A-5D8-A48-GS8」といった感じです。
この情報は、手書きでやり取りすると「0(ゼロ)とO(オー)、1(イチ)とI(アイ)」といったように間違う可能性が高いので、当事務所では、登記所に提出する際には原本をコピーさせていただいたものをそのまま封筒に入れ封をして提出するようにしています。
登記識別情報の管理
さて問題はその管理の難しさにあります。
というのも今まではその登記済証というものは紙でできていてこの世に1つしかなかったので盗難や紛失・火災にさえ気をつければよかったのですが、やっかいなことにこの登記識別情報は書面ではなくあくまでも情報(データ)です。(当然ながら登記識別情報を記した通知書自体が権利証となるのではありません!)
それには原本やコピーといった違いはなく、その情報(12桁のパスワード)が他人に知られてしまっただけで成りすましが起きる可能性があるのです。
法務局から書面で発行(通知)される時には、目隠しシールがされているのですが、見られて記憶されたらアウトなのでその保管には気を使います。
また発行された後で紛失等で情報がわからなくなった場合にも、絶対に再発行はされないのでその点も要注意ですね。
そこで、それなら初めから通知してもらわないという不発行制度や通知された後で情報を忘れたり、盗み見られた場合には失効制度というものも用意されています。
ただ、以後登記申請をする際には、登記識別情報の添付ができないので、それに代わる事前通知制度・司法書士等資格者代理人による本人確認情報提供制度・公証人による認証制度等を利用せざるをえません。
その場合の手間と費用の負担はあらかじめ覚悟しておかなければなりません。
なお、一度失効させた登記識別情報は再発行されないので要注意です。
有効証明請求制度
前述したように、登記識別情報は不発行制度により初めから通知してもらわなかったり、失効制度により比較的簡単にそれを無効にすることができます。
よって、本人以外の第三者はその情報が現在有効なのか無効なのかの判断ができないので、
登記識別情報を使って登記をする場合、事前にその情報の有効性を検証する制度が必要となります。
私たち司法書士は登記申請をする前に、登記事項証明書を取得して「物」の確認をすると同時に、登記識別情報の有効証明請求により「人」の確認もしています。
なおこの有効証明請求には1情報につき300円の費用がかかり、本人(登記義務者たる申請人)の印鑑証明書も必要となります。
■事前通知
事前通知とは
登記識別情報(または登記済証)を添付して登記申請しなければならない場合にそれを添付できない場合には、何らかの手段で申請人が本人であることを確認する必要があります。
その手段の1つが登記所からなされる事前通知です。
通知の内容は、「登記申請があった旨」、「登記申請に間違いがない場合にはその旨の申し出をすべき旨」の2点であり、通知後2週間以内に、登記名義人から間違いない旨の申し出があった場合に限り登記を実行するという制度です。
この通知は、本人限定受取郵便でなされます。
事前通知でされる通知は本人限定郵便の特例型です。
これは、郵便局の窓口に行って受け取ることもできるし、登記簿上の住所地に配達をしてもらうこともできるというものです。
受け取るには本人を確認できる資料(免許証・パスポート・写真付住基カード・健康保険証等1点)の提示が必要になります。(詳しくはゆうびんホームページ)
いずれにせよ、本人が直接本人確認資料を持って受け取らない限りこの制度は使えないので、例えば入院して受け取ることができなかったり、本人確認資料を何も持っていないか新たに取得できないような場合(あまり無いと思いますが)には利用できないことになります。
また以前の保証書制度で悪用があったケースで、あらかじめ第三者が登記義務者の住所を移転してその移転地で本人に成りすまして印鑑登録をして印鑑証明書の交付を受けるといったことを防止するため、前住所通知制度が設けられました。
この通知は登記申請から3ヶ月以内に住所移転登記があった場合に原則、前の住所にも確認のため通知するというもので、転送不要の普通郵便でなされます。
事前通知制度の問題点
問題なのは、前記の事前通知は登記申請の時点で本受付がされてしまう点です。
以前あった保証書の場合には、申請時に本受付になるのは所有権以外の担保設定等の登記の場合でしたが、新法では所有権に関する登記の場合にも申請時に本受付になってしまいます。
この点、通常よくある抵当権抹消・所有権移転・抵当権設定の3連件の不動産売買取引の場合で考えてみましょう。
以前の保証書の場合には所有権移転登記申請時は仮受付であり、無事に保証ハガキが着いて申出できる状況になってから決済をして3件同時に提出すれば特に問題はありませんでした。
ところが現行の事前通知を使うと、
最初の所有権移転登記申請時に本受付になってしまい、無事申出ができるようになったとしても、受付番号上、所有権移転登記と抵当権設定登記は連件にはなり得ません。
そこには、同時履行の問題や申出まで物件にロックがかかるので取引前の事前閲覧ができないといった取引の安全の問題や登記原因証明情報上の原因日付をいつにするのかといった実務上の問題があります。
要するに、本人の確認が完全にできていない状態(期間内に登記名義人から間違いない旨の申し出があるかどうか未確定。申し出なければ申請却下)で売買代金の決済をしなければならなくなるので、取引の実務上はなかなか使えません。
そこで使われるのが、司法書士が本人に直接会って確認し、その情報を登記所に提供することで事前通知を省略できるという資格者代理人による本人確認情報提供制度なのです。
■資格者代理人による本人確認情報提供
資格者代理人による本人確認情報提供とは
資格者代理人による本人確認情報提供制度とは、司法書士等の登記申請のプロが、登記官に対し申請人が登記義務者本人であると確信するだけの本人確認情報を提供し、登記官がそれを相当と認めたときに事前通知を省略できるという制度です。
また登記官が、申請人が登記義務者であることを確実であると認めた場合には前住所への通知も省略できます。
本人に提示してもらう情報
私たち司法書士が登記義務者本人と面識が無い場合に、本人に提示してもらう書類は法定されています。(規則72条2項)
具体的には、運転免許証・住基カード・外国人登録証明書・旅券といった写真付公的証明書なら1点、健康保険証・国民年金手帳等なら2点といったところです。
注意すべきは、これら書類は有効期限の切れていない現に有効な書類でなければならないという点です。






